『本日はすいません、私のせいで……』

 家に帰ると、サードはしょげた様子でに謝った。彼女は優しく「サードのせいじゃないよ」と言うと、目線を彼と合わせる。

「それに、時間はまだまだあるんだから大丈夫!」

 そう言って笑いかけ、はしょんぼりとするサードをなでた。だが、彼の表情はまだ浮かない。

 どうしたものか、とは困り果てた。自分が何か彼の気にするようなことをしてしまったのか、それとも正規のバディ同士であるケイタとセブンを見て桐原のことでも思い出したか……。

 色々考えてみるが、答えは分からない。彼女は全ての仮定を振り払うと、再びサードと向き合った。

「これは個人的な意見だけどね、元気のないサードを見てるのはつらいの」
『え……』
「吐き出して楽になるなら、どんな不安や不満でも、私は聞いてるから」

 だから抱え込まないでね。は少し困ったように笑うと、サードを抱きしめた。

『わわ、様っ』
「だめだなー、私じゃ役不足なんだろうなー」

 突然のことであたふたとしていたサードは、少し震えている彼女の呟きにふと顔を上げた。

、様?』

 ぽたり、と落ちてくる雨。サードの視界に飛び込んできたのは、目を涙であふれさせるの姿だった。

「ご、ごめん! あーどうしよ、なんで泣いてるんだろ私」

 自分では彼を救ってやることはできないのだろうか。はそれが悔しかった。加えて、つらい思いをしているだろうサードのことを考えると無性に涙が出てくるのだ。

 手の甲でごしごしと目元をこするの姿を静かに見ていたサードは、どうして彼女が泣いているのか考え込もうとして、やめた。それより先に慰めなくては、と判断した結果だった。

『このような時、なんとお声をかけてよろしいのか、私には分かりません。ですが、様の笑顔が見ていたいという思いは確かでございます』

 ですから、と一呼吸おき、サードはゆっくりと続ける。

『ですから、どうか泣かないでください』

 そして彼は、の目元にその小さな手を伸ばして、落涙をぬぐった。サードのその行動には彼女も驚き、目を見開いた。

『ね?』

 いつもと同じ「笑み」のパターン。でもそれは、心なしかいつもより優しく見えた。

 泣き笑いで頷くを見たサードは、ほっとしたように一息ついて『ご理解いただけたようで何よりです』と呟く。

 袖で涙を拭くと、彼女はサードを抱えなおした。

「ごめんね。それとありがとう、サード」

 表情が出される液晶部分の、少し上。はそこに軽くキスを落とすと、照れくさそうにはにかんだ。

 その瞬間、サードは自分の回路が熱を持つのを感知した。

(ああ、もしかして――)





りぼんがほどけない