『流星群?』 「うん、流星群」 今日の夜がピークなんだって、と嬉しそうにネットのニュースを指差す。ゼロワンはパソコンの画面に手をかざし五秒ほど静止したかと思うと『時間は三時から四時の間だ』と告げた。 「そこまで書いてあったっけ」 『国立天文台のデータベースを調べた』 そう言われても数秒の間に何が起こったのか、何も告げられていない彼女にはいまいち分からなかった。 * 早めに床についた後、三時ごろに起こしてくれるようゼロワンに頼んだは彼の声で目を覚ました。冬に近づいてきていて、夜の寒さは身に染みるものとなっていたため防寒はしっかりと施し、二人は屋上へと出た。 「寒いね」 『氷点下には達していない』 「でもその分空気が澄んでて星がきれいに見えるよ」 はしゃいだ様子で「あれがオリオン座で、子犬座で……」と天の星を指差すを見てゼロワンは珍しいと感じていた。いつもは落ち着いて柔らかな物腰である彼女が子供のようにはしゃいでいる。これまでに見たことがない一面に出くわして、驚くと同時にどこか嬉しくもあった。 屋上の中心部にひざを抱えて座るとそこからはただひたすらに流れ星を待った。 「あ」 嬉しそうな声があがった。流れ星が今ひとつ流れたのだ。目を輝かせて見つめるその夜空にまたひとつ。今度はそれを見るなり手を組んでぎゅっと口を結んだ。 『何をしている?』 「流れ星が流れる間に願い事を三回となえると叶う、って聞いたことない?」 『なぜ人間はそのような不確かな情報を鵜呑みにするのだ』 「願うだけなら誰にも迷惑かけないからね」 苦笑して再び天をあおぐ。あ、と声をもらすと一点をじいっと見つめてまた手を組む。そんな彼女の行動はゼロワンには理解しがたいものであったが、願いの中身については気になった。 『何を願った?』 「わ、笑わない……?」 『恐らくは』 わずかに顔を赤らめてゼロワンから視線をはずすとはおずおずと口を開いた。 「……ぜ、ゼロワンとずっと一緒にいられますように、って」 長い長い沈黙の後ゼロワンが口にしたのは『無意味だ』の一言。困惑顔で「え、な、なんでっ?!」とあわてるに対し背を向け部屋に戻ろうとしていたゼロワンはさらりと言った。 『願わなくとも叶うことだ』 |