『、』 書類に取り掛かっていたの袖をくいくいとひっぱる小さな手。いったん手を休めて「どうしたのーセブン」とその小さな手の主を見たは変な声を上げた。 「ど、どうしたのその格好!?」 『バレンタインの礼に来た』 どこか偉そうに言うセブン。態度はいつものことなのでいい。だがその格好は――リボンが巻いてあるというのは、どういうことなのだ。は頭の整理が追いつかなかった。 「いや、お礼に来てくれたのは嬉しいんだけど、なんでリボンが?」 『ケイタに頼んだら快くやってくれたぞ』 ああ、どうりで少しいびつな部分が。変に納得していた はセブンに『お礼はこの私自身だ』としれっと言い放たれ硬直した。 「……え?」 『今日一日は私を好きにするといい』 「あ、そういうことね」 『私はケイタのバディだからな』 今日のことは了承済みだから安心したまえ、と付け加えて、セブンはいそいそとリボンをはずそうとする。それを「ちょっと待ったー!」と止めると、は慌てた様子で胸ポケットから自分の携帯を取り出して、ぱしゃりと一枚。 「あー、もうなんかこれで満足」 これあれば一年頑張れる、と撮ったデータを幸せそうに眺める。その様子にセブンは『え?』と驚いた顔をする。 『も、もういいのか?』 「うん、なんか私としてはこれだけで大満足だよ」 『いや、ほらその、なんだ。どこか一緒に出かけるなどといったことはしないのか……?』 「……したいの?」 少し意地悪な答え方だっただろうか。は言ってから少し後悔して、謝ろうと口を開きかけた。だが、セブンの声がそれを遮った。 『わ、私はと出かけたいのだが』 そこまで言って『あ、いや、なんでもない……忘れてくれ』と顔をうつむけるセブン。は少しびっくりしたような顔をしていたが、ふっと笑みを作ると「セブン、リトラクトフォーム」と優しく声をかける。 『これからどうするのだ?』 「セブンの気持ちを受信したのでお出かけします」 ね、と笑ったは立ち上がると、するりとセブンを手に取りその画面に軽くキスをする。 「さっ、どこに行こうか?」 |