公園の中央で
がくるりとステップを踏んで、そのスカートがふわりとゆれる。夕焼けと電灯に照らされて伸びる影も一緒にくるくる踊る。 「しゅーせーい、はやくおいでよー」 楽しそうに俺を呼ぶ声に苦笑しながら俺は結局彼女のもとへ行く。俺はの言うことに反対できない。いや、反対するつもりが元々ない。今日だって公園に行こうなんて言い出したのはだ。理由は聞いていない。聞いたとしても返ってくるのは多分「なんとなく」の一言だろう。 「なにしかめっ面してるの、修正」 くすくすと笑って彼女は俺の手を引く。足の向く先にはブランコがある。乗ろうよ、とは楽しそうに言うと奥のブランコにひょいと座った。 「さすがにこの年齢で一人でブランコしにくるのは恥ずかしいからねー」 「不審者だな」 一定のリズムできいきいと音が鳴る中でいたずらっぽく笑って勢いをつけてそのままジャンプ。一瞬落ちるのではないかとひやひやしたがは見事に着地した。 「判定は?」 「満点」 彼女は「やったあ」なんて嬉しそうにまたくるりと回っている。でもそのバックに見える景色が俺を不安に駆り立てた。日が落ちていく、町が沈む、夜が来る。――その時間が来てしまう。 「なあ、」 なーに、と間延びした声が返ってきて俺はずきりと心が痛んだ。 「そろそろ覚まさないと」 それまで絶えず笑みをたたえていたの顔から表情が消えうせる。苦しい。「そっか」と震える声がの口から吐き出される。泣くのはやめてくれってば。 「明日を迎えなくちゃ、だめなんだ」 本当はの悲しそうな顔なんて見たくない。彼女はずっと笑ってればいいんだ。でも俺はそうせざるを得ない。 「……いいよ、気にしないで修正!」 顔を上げたは無理に笑ってた。「また、明日ね」。そう言って俺に抱きつく。途端、光がはじけたように明るくなって俺はまぶしくて目を細めた。 * 一定の間隔で鳴る電子音で目が覚めた。ついに「明日」を迎えたらしい。またいつもの一日が繰り返される。いつになったら現実でと出会えるのだろうか。それだけを支えに俺は今日も生きていく。 でも、は夢の世界にしかいないのかもしれない。いや、もしかしたらこちらが夢なのかもしれないけれど。はたして俺はどちらの世界に生きているんだろうか。――そんなことを考えながら俺は舌打ちをした。 |