僕にとってとはどんな存在かと聞かれると、返答に迷う。

 彼女は僕の命の恩人だし(それを言うと彼女は「そんなことない」と否定するのだけど)、僕の護るべき相手で、大切な一番のパートナーで、それに……と、説明しきれないのだ。

 ……彼女は、僕のことをどう思っているか知らないけれど。

「一般的に、カオスデュークモンって種はウイルスの本能に目覚めてて、思考も完全にダークサイドに染まってるって聞いたんだけどさ」

 そんなことをぼんやり考えている所を、がいきなり言うものだから、僕はぎょっとして彼女の顔を見た。唖然とする僕をよそに、は「でもさ、」と続ける。

「カオスデュークモンは当てはまらないよね」
「ああ、まあ、個体差もあるから、そんなものだよ」

 だよねえ、とはゆるりと笑った。
 もし彼女が僕のことをそんな風に思っていたらどうしようかと少し焦ったが、そんなことはなかったようで安心だ。

「やっぱりその『一般』どおりのカオスデュークモンなんて、想像つかないな」
「気になるか?」
「んー、ちょっとね。比べてみたいかも」

 ふあ、と口元を手で隠しながら大きなあくびをひとつする。もう夜も深まってきたころだし、眠いのだろう。でも彼女は野宿のとき寝ようとしない。見張りは僕がするからと言っても、僕を気遣ってくれるのだ。だからなるべくは、そのゾーンの住人に協力を得ているのだが、うまくいかないこともある。

、今日はさすがにもう寝た方がいい。長い距離を歩いて疲れただろう?」
「そっ、そんなことないよ! 私はまだ……」

 眠くない。そう言いかけて、またあくび。僕が小さく笑うと、は観念したのか恥ずかしそうに「ちょっと、眠いかも」と呟いた。

「ほら、明日も何があるか分からないんだ。しっかり休んでくれ」
「でも、それだとカオスデュークモンが一晩中番を……」

 ほら、またそうやって僕のことを気遣う。は本当に優しい。

(優しいきみは知らない。知るはずがない)

 だけど、今夜はちゃんと寝てもらわなきゃ困るんだよ。

「人間には睡眠が必要だろう。僕は大丈夫だから」

 そう、きみのためなら僕はなんだってできるさ。もう一度あの暗黒の海に沈んだっていい!

(僕がきみにどんな感情を抱いていて、)

 僕の言葉に少し困ったようにはにかむきみが愛しい。

「……それじゃ、お言葉に甘えて寝ようかな」

 ああ、でもそうやってすぐ嘘に騙されてしまう所は不安だなあきみは。

(そして、)

 でもこれからは僕が、きみを傷つけようとする嘘からもきみを護るよ、

「おやすみなさい」
「ああ、」

(何をしようとしているのか)

「――おやすみ、

 僕は、きみの思っているような存在では、ないんだよ。 





今夜、君を、
(迎えに行くよ)
2012/02/10